『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

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レインボーズアパートメント仲池上に視覚障害者の方が新しく入居しました。職員一同初めての対応となります。

伊藤亜紗著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)は美学が専門の著者による「視覚を使わない体に変身して生きてみること」を目的とした、支援する側/される側という福祉的な固定観念が刷新されるユニークな内容です。

「第1章 空間」では見えない人の空間把握について書かれています。見えない人の部屋はきちんと整理されている、なぜならばあるべきものが定位置になければそれを探すのに労力を要するからとあり、まさに今回の利用者の居室の様子そのままだなとうなずいてしまいました。さらに注目した部分を引用します。

部屋は、「料理をする」「テレビを見る」「メールを送る」など、移動以外のさまざまな行為を行う場所です。そのような場所では、「頭の中のイメージ」と「物理的な空間」をなるべく一致させることが、ストレスなく過ごすためには重要なのです。そのためには、「物理的な空間」に「頭の中のイメージ」を合わせるよりも、頭が把握しやすいようなやり方で、物理的な空間を作るほうがはるかに効率がいい。物の数を減らし、単純なルールで物を配置するようになります。

(60ページ)

これに関して思い当たることがあります。身体機能が低下してきた他の利用者様のためにお風呂の椅子を高めのサイズのものを別途購入し、浴室に置き、この利用者様からは喜ばれました。しかし、視覚障害者の方が入浴の際、それを外に出してしまい、一方の利用者様から「私の椅子が邪魔なのか?」と反応があり、ちょっとしたトラブルに発展しそうになりました。

しかし、本書を読めば、この方にとっては「物の数を減らし、単純なルールで物を配置する」ための根拠のある行いだった可能性があることが想像されます。

このような事例を、職員はもとより利用者様と共にひとつひとつトライアンドエラーで学んでいき、よりよい支援ができるようにしたいと思います。